小池一夫先生と小島剛夕先生の劇画時代劇 首斬り朝の面白さを説明します。
・原作について
首斬り朝は原作・小池一夫先生と画・小島剛夕先生の両巨匠にて作成されています。
このお二方の作品ですと、やっぱり「子連れ狼」が有名ですね。
公儀介錯人である拝一刀は柳生烈堂の策略に嵌められてその地位を失うが、
一子大五郎と共に刺客子連れ狼として柳生を討つため旅に出るというものです。
この首斬り朝も子連れ狼も江戸時代の風情や文化をよく理解しているお二方だからこそ描ける時代劇シリーズですね。
ちなみに子連れ狼にも首斬り朝が登場します。
小池一夫先生につきましては、クライング・フリーマンやオークションハウスも有名ですね。
小島剛夕先生は木枯らし紋次郎でしょうか。小島剛夕先生の描く女性がとにかく色っぽくてとても惹かれます。
ずっと見ていたいくらいです。
・首斬りの稼業とは
江戸時代に刀剣の試し切り役として御様御用(おためしごよう)というお役目がありました。
試し切りはおもに死体を用いてこれを寝かせ、刀にて両断することにより行います。同時に罪人の処刑も任されていました。
そして、この御様御用に山田朝右衛門が選ばれていました。この名は山田家の当主が代々名乗ったそうです。
処刑後の死体は山田朝右衛門に拝領され、試し切りを行いたいものは朝右衛門に使用させてもらったそうです。
また、臓器は薬になったといい、台所は潤ったとのこと。
しかしながら一種の穢れを伴う仕事なので、祭りなどのお目出たい行事の日には外出しないでほしいとお願いされるそうです。
・拝一刀との違い
子連れ狼の拝一刀は公儀介錯人であり、介錯するのは大名等位の高い方々です。
葵の紋所を身に着けて斬り、その行為がお上の意向を表しています。
ただし、この公儀介錯人は物語の架空の役職です。
山田朝右衛門が斬るのは罪人です。罪人の処刑をします。
・首斬り朝
朝右衛門は人斬りの家系であり、生まれたときからその職に就くことが決まっていました。
父と二人暮らしでしたが、父は修行の仕上げとして自分自身を息子に斬らせました。(あえてそうする必要は無かったのですが、なぜそのようにしたかは物語の中で明らかにされます。)
これにより家族は誰一人居らず、さらにその職自体が穢れを伴い不吉とされ、江戸の町民からおめでたい祭りの日には外出しないて欲しいと菓子折り持参されるほどです。
来る日も来る日も人を処刑し、人から恐れられ、自分の存在意義とは何なのか。自分ならば、とてもとてもこの孤独には耐えられません。
このような境遇でありながら、他人に対して思いやりがあり、自分が斬る罪人に対しても慈悲の心を持って接しています。
そして剣の腕は立ち、物知り、性格は穏やかで面倒見がいいときているので、頼りにする人が周りに集まってきます。
江戸の町で事件が起こると朝右衛門の出番です。
一話完結方式で話は進んでいきます。
首を斬られる罪人に悔いが残らないように計らったり、江戸の町を脅かす凶悪な浪人を倒したり、
十手持ちの傘次郎にアドバイスしたり・・・
朝右衛門が結婚するかと思われる話もありましたが結局は結婚しませんでした。
朝右衛門は首斬りは自分の代で終わらせるという決意を持っているようです。
私はなぜか朝右衛門が菊の花を育てる話が印象に残っています。
菊はとても手がかかる植物で、本来ならば職人が大切に育てるものですが、朝右衛門が素人ながらアドバイスを受けながら年月をかけて育てていきます。
首斬りがなぜ菊の花を育てることになったのか・・・なんの意味があるのか・・・その菊の花はどうなるのか・・・
それは漫画でご確認ください。
・そうはならんやろ・・・という面白い展開
小池一夫先生の場合、特に男女の絡みでうん?そうはならないんじゃない?という展開があります。
十手持ちの傘次郎は悩み事があると、朝右衛門をとても頼りにしています。朝右衛門は傘次郎にいつも良い助言をくれるのです。
ある日、十手持ちの傘次郎が盗賊の新子の策により川で溺れてしまいます。
傘次郎が本当に死にそうになるのを見ると、新子は傘次郎を助けて陸に引き上げました。
そして、まだ意識が朦朧としている傘次郎にこれ幸いとまたがって・・・やってしまいます。(?)
ちなみにこのときお互い初対面です。
その後病院で治療を受けて回復した傘次郎・・・
ところがこの傘次郎、なんと新子に惚れてしまいます。(??)
しかしそれは十手持ちと盗賊との道ならぬ恋・・・傘次郎は悩み、朝右衛門に相談します。
朝右衛門は一計を案じるのでした。
その後、新子は捉えられて奉行所に引き渡されました。新子は大した罪は冒していないようです。
奉行所の判決は江戸所払い・・・ただし、好きなものと結婚する場合は江戸に残って良いとのことでした。
新子は「なんだこの判決・・・」と思いながら、外に出ると、何故か籠が用意されおり、その横に朝右衛門が待っていました。
そして、「傘次郎と結婚させるために、盗賊のままだとまずいから一旦私の養子にするからよろしく!」と事の次第を説明されるのでした。
それを聞いた新子は嬉しかったんだと思いますが、自分をばかにしているんじゃないかという思いもあり、どうしても嫌だと拒否し続けます。
しかし、最終的には傘次郎が俺の言うことを聞けとばかりに新子を一発殴ります。
新子は目を腫らしながら、傘次郎と祝言を挙げるのでした。めでたしめでたし?
いかがですか!このスピード感!
ちなみに後付けの設定でこのとき新子は初めてであったと告白していました。
あんなにノリノリだったのに?
傘次郎と新子の話はスピンオフされ、別の漫画になっています。
後に新子も十手を預かり、夫婦で事件を解決することになりました。
・最終回はコロナを想起させる?
原作者のお二人ともお亡くなりになっています。
小島剛夕先生は2000年1月5日に逝去されています。
小池一夫先生は2019年4月17日に逝去されています。肺炎とのことでした。
思い出したのは首斬り朝の最終話です。
江戸の町に冬が到来し風邪っぴきが増え、朝右衛門も周りの人もごほんごほんとせき込んでいる・・・
どんなに偉い位の人でも風邪をひくときはみんなと同じで風邪をひくよね・・・人間の根本は平等なのかもね。
今現在のようにコロナとなってしまうと、ただ事ではなくなってしまいますが・・・
なんとなくこの終わり方は考えさせられるものがありますね。
首斬り朝は作風は今から比べると古いですし、今では使われない(使ってはいけない)ような表現や言い回しがあり、最初は読むのにためらいがあるかもしれません。
しかし中身は熱いです。そういうのが好きな方は読んで損のない漫画ですよ!